人を操るテクニックと、それから自分を守る方法を紹介。「影響力の武器ーなぜ、人は動かされるのか」[書評・要約]

スポンサーリンク

・買うつもりじゃなかった商品を買ってしまった
・興味がないイベントに誘われ、断り切れずに参加してしまった
・本当はやりたくないのに、「やります」と答えてしまった

あなたにもこのような経験はないでしょうか。

何かを頼まれたり、勧められたりしたら簡単に承諾してしまう。

そんな悩みを抱えている人もいるでしょう。

それは、あなたが丸め込まれやすいのではなく、「イエス」と言わせるようなテクニックによって承諾させられているだけかもしれません。

私たち人間はつい思考の近道に頼ってしまいがちです。

例えば、

・「値段が高いから、この商品は良質なものだ」
・「専門家が言ったことだから正しいはず」

など、情報を注意深く分析せずに物事を判断してしまいます。

情報の一部分だけを見て機械的に反応する”自動的な行動パターン”にハマってしまっているのです。

そして、この”自動的な行動パターン”を熟知している人に対して、私たちは恐ろしいほど無防備であり、何かを頼まれたらよく考えもせずに「イエス」と答えてしまうのです。

私たちが「イエス」と答えてしまうのは”どんな場合に人は承諾してしまうのか”や”承諾を引き出すテクニックを使われたときの防衛法”を知らないからです。

これらを知っていれば、「まんまと丸め込まれてしまった」などと思うことは少なくなるでしょう。

そこで、この記事では書籍「影響力の武器ーなぜ、人は動かされるのか」にまとめられている”相手から承諾を引き出すための心理学的な原理”と”その原理に基づいたテクニックを使われたときの防衛法”について紹介します。

この記事で紹介する心理学的な原理は以下の6つです。

①返報性のルール
②コミットメントと一貫性の原理
③社会的証明の原理
④好意
⑤権威
⑥希少性の原理

これらの原理についてそれぞれ紹介していきます。

①返報性のルール

返報性のルールとは?

返報性のルールとは、”他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなくてはならない”というルールです。

何かをプレゼントされたときに、「お返しをしなきゃ」と思うのは返報性のルールが働いた典型例でしょう。

この返報性のルールは影響力の武器の中で最も強力で、望んでいない厚意を受けたときにも適用されます。

また、恩恵を受けっぱなしにしているという状態は不快であるため、早くその状態を解消しようと、かなり大きな頼みを聞いてしまうこともあります。

そのため、返報性のルールを使って何かをさせようと策略を立てている人には気をつけなければいけません。

防衛法

返報性のルールから自分を守るのに最も効果的なのは、”ルールを始動させないようにする”ことです。

最初の厚意や譲歩を拒絶すれば、相手の策略からは逃れられます。

しかし、全ての厚意や譲歩を拒絶するのは現実的ではありません。

相手からの申し出が本心か策略かを見分けるのは困難ですし、拒絶するのを前提にしていると本当の厚意や譲歩を素直に受け取れなくなってしまいます。

もっと現実的な方法として、”最初は相手の厚意や譲歩を受け入れ、策略だとわかった時点で、その影響力から逃れるためにそれ相応の反応をする”ことが有効です。

厚意には厚意を返すべきですが、策略に厚意を返す必要はありません。

こちらが相手の行動を親切ではなく、承諾を引き出すための策略だとみなしている限り、相手は返報性のルールを味方にすることができません。

②コミットメントと一貫性の原理

コミットメントと一貫性の原理とは?

コミットメントとは”自分の意見を言ったり、立場を明確にすること”です。

そして、一貫性の原理とは”自分の言葉、信念、考え方、行為を一貫したものにしたい、あるいは他者からそう見られたいという欲求”のことです。

そして、私たちがコミットメントによって立場を明確にしてしまったら、一貫性の原理によって、そのコミットメントと一貫した行動をとるように圧力がかけられます。

この圧力は自分の内からも外からもかけられます。

言っていることとやっていることが一貫していないと、周りからの信頼を失いますし、自分のことも信じられなくなってしまうでしょう。

そのような圧力によって、私たちは自分の決断を正当化しながら行動するようになります。

それが明らかに間違った決断だとしてもです。

例えば、選挙で一票を投じると、その直後から自分が投票した候補者が一番素晴らしいと信じ込むようになります。

他の誰から見ても、もっと良い候補者がいたとしてもです。

投票によって自分がその人を応援しているという立場を明確にしたことで、それを一貫しようとする圧力がかかってしまっているのです。

このような”コミットメントと一貫性の原理”は承諾を引き出すのにも利用されます。

例えば、あなたがお店で何かの商品を試したとしましょう。

食べ物の試食、車の試乗、化粧品のテスターなど様々なものが想像できると思いますが、これらを試した後、店員から感想を聞かれるでしょう。

あなたはおそらく「おいしい」「良い感じ」などのポジティブな感想を言うでしょう。

店員に対してわざわざ否定的な感想を言う人はほとんどいないはずです。

このような感想を言うことは、「この商品が良いものだと思っている」という立場を明確にするコミットメントになります。

そして、「良い商品だと言ったのに買わないのか」と思われたくないという一貫性の圧力から、商品を買ってしまうのです。

防衛法

一貫性を保つことは、ほとんどの場合、経済的かつ適切な行動を取らせてくれるので、それを私たちの生活からすべて排除してしまえばいいと単純に決めるわけにはいきません。

しかし、一貫性が私たちにとって不利な選択を導くことがあるのもまた事実です。

そこで大事になるのが、一貫性の原理によって私たちが不利な状況に陥るのはどんなときなのかを知ることです。

それを教えてくれるサインを2つ紹介します。

1. 胃から送られるサイン

コミットメントと一貫性圧力のせいで、やりたくもない要求を飲まされそうになっていると気づいたときにみぞおちの辺りから発せられるサイン。
胃が硬くなったように感じる。
このサインが発せられたときの一番良い対処法は、「丸め込まれそうになっているのは、馬鹿げた一貫性を保とうとしているからであり、自分はそんなものにこだわりたくない」と相手に説明することです。
しかし、このようなことを相手に言うのも勇気がいることでしょうから、馬鹿げた一貫性を保とうとしていると気づいたら、やんわりと断るようにするのが無難かと思います。

2. 心の奥底からのサイン

胃からのサインが送られてくるのは、だまされかけているのが明らかな場合だけです。
罠に引っかかっているのかどうか、はっきりしないときには「今知っていることはそのままにして過去に戻ったとき、もう一度同じコミットメントをするだろうか」ということを自分に問いかけてください。
その答えが「ノー」なのであれば、やりたくもない要求を飲まされそうになっている可能性が高いです。

③社会的証明の原理

社会的証明の原理とは?

社会的証明の原理とは、”人は他の人たちが何を正しいと考えているかを基準にして物事を判断する”という原理です。

「みんなやっているから自分もやる」というのは典型的な例でしょう。

”演奏や演劇などが終わって、誰かが拍手をし始めたら周りの人たちも拍手をし始める”というのも社会的証明の原理の例と言えるでしょう。

この社会的証明の原理は、以下に示す2つの条件下で強い影響力を持ちます。

1. 不確かさ:自分の決定に確信が持てないとき、状況が曖昧なとき
2. 類似性:人は自分と似た他者のリードに従う傾向がある

自分の決定に確信が持てずに悩んでいるときや、状況が曖昧でどう行動していいかわからないときに、「他のみんなはこうしているよ」と言われたら、それと同じように行動してしまうでしょう。

また、あなたが何か悩みを抱えているときに、似た境遇の人から助言を受けたら、その助言どおりに行動するでしょう。

しかし、「みんなやっている」という言葉や似た境遇の人からの助言が、あなたを操るための嘘の可能性もあるのです。

何かの商品を買うか迷っているときに、店員から「その商品はあなたと同年代の人たちに凄く人気で、たくさんの人が購入されています。」と言われたら、つい買ってしまうでしょう。

店員の言葉が嘘であったとしてもです。

その商品を買って、あなたが満足できればよいのですが、「店員の言葉に乗せられて買ってしまった」などと後悔しないためにも、社会的証明の原理に対する防衛法を知っておくことは大切です。

防衛法

社会的証明の原理から自分を守るには、以下の2つのことが大切になります。

1. 類似した他者が行っている、明らかに偽りの証拠に敏感になる
2. 自分の行動を決定する際には、類似した他者の行動だけを決定の基礎にしない

物事を決定するときには、似た境遇の人の言葉・行動を無条件で信じることはせずに、少し周りを見渡して客観的に考えることが大事です。

④好意

好意の影響力

人は自分が好意を感じている知人に対して「イエス」と言う傾向があります。

あなたも好きな人や尊敬している人に何か頼み事をされたら、それが正直あまりやりたくないことでも承諾してしまうのではないでしょうか。

そして好意は以下の5つの要因によってもたらされます。

1. 身体的魅力
2. 類似性
3. 称賛
4. 接触と共同
5. 連合

それぞれを簡単に説明します。

1. 身体的魅力

身体的魅力は、才能、親切さ、知性といった他の特性に関する評価を高めます。
これは「ハロー効果」という、”目立ちやすい特徴に引きずられて、他の特徴についての評価が歪められる現象”によるものです。
顔が整っている、引き締まった体型をしているなど、見た目が良いと性格や知性も良く見られる傾向があります。
要するに、イケメンや美女は好かれやすいということです。

2. 類似性

人は自分と似た他人に好意を感じます。
また、類似性は「社会的証明の原理」にも関わってくるので大きな影響力を持つと言えるでしょう。

3. 称賛

人は褒められれば嬉しいですし、褒めてくれた人に対して好意を抱くでしょう。
それがお世辞であったとしても、一般的には好意は高まります。

4. 接触と共同

人や事物と接触を繰り返し、馴染みをもつことで好意は高まります。
ようするに、よく顔を合わせて、一緒に何かに取り組むことで好意が高まっていきます。
ただし、対立などの不快な環境で顔を合わせても逆効果となるので、協力関係が好ましいです。

5. 連合

好ましい事象との結びつきにより好意は高まります。
例えば、ある有名人の出身地が自分と同じだと知ったら、その人に対する好意は高まるでしょう。
”自分の出身地という好ましい事象”と”有名人”が結びつくことにより、その有名人への好意が高まります。

防衛法

自分が好意を持っている人に頼まれたことは、よく考えずに承諾してしまいがちですが、それによって自分が不利益を被ることは避けたいでしょう。

そのためには、以下の2つのことを意識するとよいでしょう。

1. 承諾を引き出そうとしてくる相手に対して、過度の好意を抱いていないか考える。
2. 相手自身と申し出の内容を切り離し、申し出のメリットだけを考えて決定を下す。

「他の誰かに同じことを頼まれたときに、自分は承諾するだろうか?」と考えてみるとよいです。

⑤権威

権威の影響力

医者や大学の教授などの権威者は優れた知識や力を持っているのが普通なので、そうした人の命令に従うのは正しい行為であることが多いです。

しかし、こういった権威者にある意味服従するような行動は、自分で考えることをせずにとってしまうことが多いです。

そして一番厄介な問題が、実際に権威がなくても、この人は権威あるすごい人なんだと思い込んでしまうことがあるということです。

例えば、医者や教授といった肩書きをもつ人のことを私たちは権威者だと思いますが、その肩書きをもっているという証拠がなくても私たちはその人が権威者であると思い込みます。

肩書きが嘘であっても、ほとんどの場合疑うことをしないのです。

また、警官の制服や高級なスーツ、白衣といった服装や、宝石、高級車といった装飾品によってもあたかも権威をもっているように見せかけることはできるのです。

見せかけの権威によって、あなたを操ろうとするような人には気をつけねばなりません。

防衛法

見せかけの権威から身を守るには「この権威者は本当に専門家なのか」と疑うことが大切です。

また、相手があなたを操ろうとしているのか、それとも誠実に接してくれているのかを考えることで、あなたが不利益を被ることは避けられるでしょう。

⑥希少性の原理

希少性の原理とは?

希少性の原理とは、”人は機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす”という原理です。

希少性の原理が使われている典型的な例は、よくお店で大々的に掲げられている「数量限定」や「期間限定」といった言葉でしょう。

「今しか買えないかも」「今しかできないかも」といった、買う機会や、する機会を失いそうな状況ではその商品や行動がより価値あるものだと感じてしまうのです。

そして、希少性の原理が最もよく適用できると考えられる2つの条件があります。

以下の2つがその条件になります。

1. 普段はあるものが希少になった場合
2. オークションなど他人と競っている場合

・普段あるもの、例えばトイレットペーパーが品薄になった場合にトイレットペーパーを見つけたら、必要ではないけど買えるだけ買う。

・オークションで他人と競っていたらヒートアップし、購入予算を大幅に超えてしまった。

このようなことは往々にして起こりえます。

防衛法

希少性の原理により、正常な価値判断ができなくなることで損をすることがないように、希少性を含むような状況では頭に血が上らないように注意が必要です。

「数量限定品があったラッキー!」と興奮して、何も考えずにその商品を買うのはやめましょう。

もし、興奮して頭に血が上ってしまったら、まず興奮を静め、なぜそれが欲しいのかという観点から考えなおしてみるのがよいでしょう。

まとめ

”相手から承諾を引き出すための心理学的な原理”と”その原理に基づいたテクニックを使われたときの防衛法”について紹介してきました。

ポイントを以下にまとめておきます。

返報性のルール
・”他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなくてはならない”というルール
・相手の行動が厚意ではなく、あなたから承諾を引き出すための策略だとわかったら、厚意を返す必要はない

コミットメントと一貫性の原理
・コミットメントとは”自分の意見を言ったり、立場を明確にすること”
・一貫性の原理とは”自分の言葉、信念、考え方、行為を一貫したものにしたい、あるいは他者からそう見られたいという欲求”のこと
・馬鹿げた一貫性を保とうとしていると気づいたら、相手の要求をやんわりと断る

社会的証明の原理
・”人は他の人たちが何を正しいと考えているかを基準にして物事を判断する”という原理
・物事を決定するときには、似た境遇の人の言葉・行動を無条件で信じることはせずに、少し周りを見渡して客観的に考えることで社会的証明の原理から自分を守る

好意
・人は自分が好意を感じている知人に対して「イエス」と言う傾向がある
・相手に対して、過度の好意を抱いていないか考え、申し出のメリットにだけ注目するようにすることで好意の影響力から逃れる

権威
・医者や大学の教授などの権威者の言葉は正しいことが多い
・しかし、権威者の言葉を信じるあまり、自分で考えなくなってしまう
・偽物の権威でも影響力はあるため、「この権威者は本当に専門家なのか」と疑うことが大切

希少性の原理
・”人は機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす”という原理
・希少性の原理により、正常な価値判断ができなくなり損をすることがないように、希少性を含むような状況では頭に血が上らないように注意が必要
・頭に血が上ってしまったら、まず興奮を静め、なぜそれが欲しいのかという観点から考えなおす

日常生活の中には、あなたから承諾を引き出すためのテクニック・策略が意外と多いです。

承諾がどのようにして引き出されるのかや、策略から自分を守る方法を知っておくことで、やりたくもないことをやらされることが減り、人生は豊かになっていくのではないでしょうか。

書籍「影響力の武器ーなぜ、人は動かされるのか」には、この記事で紹介した6つの”相手から承諾を引き出すための心理学的な原理”のより詳細な説明や、”心理学的な原理に基づいたテクニックを使われた体験談”などが書かれています。

もっと詳しく内容を知りたい方はぜひ「影響力の武器ーなぜ、人は動かされるのか」を読んでみてください。

けっこう分厚い本なので、読むのが大変かもしれませんが、その分多くの知識を得ることができます。

PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました