あなたは1日にどれくらいの時間スマホを使用しているでしょうか?
スマホの使用時間を日頃から意識している人は少ないとは思いますが、現在、大人は1日に平均で4時間をスマホに費やしていると言われているため、あなたのスマホ使用時間も1日4時間に近いのではないのではないかと思います。
便利かつ娯楽の提供もしてくれるスマホは、私たちの生活を豊かにしてくれており、もはや生活していくうえで欠かせないアイテムとなっています。
しかし、そんなスマホが我々人間に対して決して無視できない悪影響を与えていることを、あなたはご存じでしょうか?
生活していくうえでスマホを手放すことは到底できないからこそ、スマホが私たちに与える悪影響を知り、スマホとの距離感を考えることは非常に大切だと思います。
また、スマホ依存症の状態であると自覚があり、改善したくてもなかなかできないという人にとっては、スマホによる悪影響を知っておくことで改善の手助けになるかもしれません。
そこで、この記事では、書籍『スマホ脳』の内容から、”スマホが現代人に与えている悪影響”について紹介していきます。
スマホによる悪影響についての紹介でありながら、この記事をスマホで見ている方もいらっしゃるだろうという若干の矛盾を感じるところではありますが、ぜひとも参考にしていただけたら幸いです。
『スマホ脳』の概要
書籍タイトル | スマホ脳 |
著者 | アンデシュ・ハンセン |
翻訳者 | 久山葉子 |
発行日 | 2020年11月18日 |
出版社 | 新潮社 |
ページ数 | 256ページ |
価格 | 1078円(単行本、2024年6月29日時点Amazon価格) 970円(Kindle版、2024年6月29日時点) |
まえがき
コロナに寄せて―新しいまえがき
第1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた
人類が現代に適応できない理由
人間は現代社会に適応するように進化していない
感情があるのは生存のための戦略
決断を下すとき、私たちを支配するのは感情
ネガティブな感情が最優先
第2章 ストレス、恐怖、うつには役目がある
ストレスのシステムが作られた過程
扁桃体―人体の火災報知器
すぐに作動する扁桃体
不安―起きるかもしれないという脅威
不合理な不安さえも合理的
うつは天然の防護服か?
長期にわたるストレスの代償
うつ症状―感染への防御?
感情を言葉で表せることが大事
警告フラグ
必ずしも「いちばん強いものが生き残る」わけではない
第3章 スマホは私たちの最新のドラッグである
ドーパミンの役割
脳は常に新しいもの好き
「かもしれない」が大好きな脳
「もしかしたら」がスマホを欲させる
報酬中枢を煽るSNS
シリコンバレーは罪悪感でいっぱい
IT企業トップは子供にスマホを与えない
デジタルのメリーゴーラウンドにぐるぐる回されてしまうのは簡単だ
第4章 集中力こそ現代社会の貴重品
マルチタスクの代償
脳は働きが悪いときほど自分をほめる
限りある作業記憶
サイレントモードでもスマホは私たちの邪魔をする
リンクがあるだけで気が散る
私たちはさらに気が散るように訓練を重ねる
手書きメモはPCに勝る
長期記憶を作るには集中が必要
脳は近道が大好き
グーグル効果―情報が記憶に入らない
周囲への無関心
第5章 スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響
過小評価されている睡眠
私たちはなぜ眠るのか
ストレス―それにスクリーン―が眠りを妨げる
ブルーライトの闇
電子書籍vs「普通の」本
感じやすさは人それぞれ
第6章 SNS-現代最強の「インフルエンサー」
人間の脳は悪い噂が大好き
ゆりかごから墓場までの社交性
人生の数年がフェイスブックに吸い取られる
私たちは自分のことを話したい
SNSを使うほど孤独に
社会的地位は精神の健康のために重要
デジタルな嫉妬
フェイスブックが人生の満足度を下げる
SNSは様々な方向から私たちに影響を与える
SNSが女子に自信を失わせる
他人は自己を映す鏡
では、SNSが私たちの共感力を殺すのか?
あなたの注目を支配しているのは誰?
デジタル軍拡競争
どんな商品が欲しいのか、決めるのは私たち
「自分たちvsあいつら」の血塗られた歴史
フェイクニュースが広がるメカニズム
そろそろデジタルデトックスを
第7章 バカになっていく子供たち
子供のスマホ依存
アルコールは禁止するのに
幼児には向かないタブレット学習
報酬を我慢できなくなる
学校でのスマホ―敵か味方か?
スマホ追放で成績アップ
若者はどんどん眠れなくなっている
若者の精神不調が急増している
長期調査の結果も同じ
インターネットを携帯できるようになった時代
精神状態vs依存
スクリーンタイムの概念
第8章 運動というスマートな対抗策
情報のTsunami
少しの運動でも効果的
では、なぜ集中力が増すのか
子供でも大人でも、運動がストレスを予防する
ストレスに対する心のエアバッグ
ますます運動量が減っている
すべての運動に効果がある
第9章 脳はスマホに適応するのか?
私たちのIQは下がっている
タクシー運転手の脳が変化した理由
「鉄道酔い」と「デジタル酔い」の決定的違い
研究が追いつかない!
私たちは何を失いかけているのか
人間はまだ進化するのか
心の不調を軽くみてはならない
人間は幸せな生き物ではない
テクノロジーで退化しないために
第10章 おわりに
デジタル時代のアドバイス
コラム
適度なストレスにさらされよう
人前で喋る恐怖
不安は人間特有のもの
どんな人がスマホ依存症になるのか
マルチタスクによって間違った場所に入る記憶
スマホでうつになる?
スクリーンは食欲にまで影響する?
一生のうちに何人と知り合えるのか
手薄になる自己検閲
何にいちばん嫉妬する?
なぜ前頭葉は最後に成熟するのか
私たちはひどい体型!
謝辞
人生のバイブルに―訳者あとがき
要約:スマホ依存による悪影響
スマホは脳のストレスシステムや報酬システムに干渉することで、私たち人間に様々な悪影響を与えています。
ここからは、スマホの使用により、具体的にどのような悪影響があるのかを紹介していきます。
※ストレスシステムや報酬システムの説明は省きますので、気になる方はぜひ『スマホ脳』を読んでみてください。
悪影響①:集中力、記憶力が奪われる
現代の人々はスマホによって集中力を奪われてしまっています。
何かの作業中にスマホの通知音や着信音が鳴れば、当然気になってしまい集中は途切れてしまいます。
「だったら集中したいときはスマホをサイレントモードにして、通知が来ないようにすればいいじゃん」と考える人もいるでしょう。
しかし、サイレントモードにしていようが、スマホがそこにあるというだけで集中力が奪われてしまうことが複数の実験からわかっています。
また、スマホが手元にあると、複数の作業を並行して行う”マルチタスク”を無意識のうちにしてしまいがちになります(例:動画を観ながら勉強する、映画を観ながらスマホをいじる)。
マルチタスクは実際のところ、複数の作業を同時に行っているのではなく、集中する対象をこまめに切り替えながら作業をしている状態です。
集中の対象を切り替えるだけであれば一瞬ですが、脳の意識は元の作業に残ったままであるため、作業を切り替えた後に100%集中できるまでには何分もかかってしまいます。
そのため、マルチタスクをすると脳は効率よく働かず、集中力に悪影響が出てしまうのです。
さらに、マルチタスクは頭の中のメモ帳のような機能の”作業記憶(ワーキングメモリ)”や”新しい長期記憶の形成”にも悪影響を与えます。
長期記憶の形成には、覚えておきたい対象に集中することで、脳に「これは大事なことである」と認識させなくてはならないのですが、スマホにより集中ができていないと新しい長期記憶を作ることが出来なくなってしまうのです。
そのため、何か作業をするときはスマホを隣の部屋に置いてくるなどして、できるだけスマホが手元にない状態にするのが良いでしょう。
集中力や記憶力に関しては↓の記事も参考になるかと思いますので、気になる方はご覧になってみてください。
悪影響②:精神状態が悪くなる
16件の研究で合計12万5千人の子ども・若者のスクリーンタイム(スマホやタブレットをつかっている時間)について調査した結果、下記のことが判明しています。
・1日2時間を超えるスクリーンタイムは鬱のリスクを高め、時間が長くなるほどリスクは高まる
・1日7時間以上使用する人は、スクリーンタイムの短い人と比べると、不安の症状が倍多く見られる
また、スマホを手放せない人のなかには、SNSに多大な時間を費やしている人もいるでしょう。
SNSは近くにいない人とでも気軽に交流ができる便利なものである一方、精神状態を悪くする恐れもあります。
数多くの調査によって示唆された、SNSによる精神への悪影響には以下のようなものがあります。
・SNSを熱心に利用している人たちのほうが孤独を感じている
→SNSは現実の社交の代わりにはならない
・常に誰かと比較されることによって、自信を無くしてしまう
→幸せそうな他人に対する嫉妬、劣等感
・”共感的配慮(辛い状況の人に共感できる能力)”と”対人関係における感受性”が悪化
・SNSが私たちを鬱にする可能性がある
現代に生きている以上、SNSを全く使わないというのは非常に難しいですが、このような悪影響から自分を守るためにも熱中しすぎるのは避けたほうが良いでしょう。
特に以下のような人はSNSによる悪影響を受けやすいとされているので、注意が必要です。
・神経質で、心配性で、常に不安を抱えている人
・SNSを見るだけで、自ら投稿はしない消極的なユーザー
一方、SNS以外に自分の居場所があり、現実の社交生活をさらに引き立てるためであったり、友人や知人と連絡を保つための手段としてSNSを利用している人の多くは、むしろ精神状態が良くなるという調査結果もあります。
SNSに時間を費やしたからといって、必ずしも精神状態が悪くなるというわけではないということも知っておいていただきたいです。
悪影響③:「ごほうび」を我慢できなくなる
・今、ゲームで遊ぶのを我慢して勉強すれば、有名大学に進学できるかもしれない
・ダラダラするのを我慢して運動すれば、良いスタイルをキープできるかもしれない
・ラーメン屋に通うのを我慢すれば、将来健康に過ごせるかもしれない
このような、「将来の大きなごほうび」のために「目の前の小さなごほうび」を我慢する能力は、人生で何かを成すために非常に重要となりますが、複数の調査でよくスマホを使う人のほうが衝動的になりやすく、「ごほうび」を先延ばしにするのが下手だということがわかっています。
スマホに依存すればするほど、「将来の大きなごほうび」のために「目の前の小さなごほうび」を我慢する力、要するに”忍耐力”が低下してしまうのです。
これは特に子どもへの影響が大きく、すぐに成果(ごほうび)が得られない”上達に時間がかかるようなこと”を学べなくなってしまう恐れがあります。
スポーツや楽器、他国の言語などを習い事等で学ばせようとしても、「すぐに結果がでないことはやりたくない!」と投げ出してしまう可能性が高くなってしまうのです。
「目の前の楽しいことだけやって生きていければそれでいいよ」という方もいるかもしれませんが、将来をより良くしたいのであれば、スマホとの距離感を見直す価値はあるかと思います。
悪影響④:睡眠時間と運動時間の減少
スマホを使う時間が長くなるほど、睡眠時間や運動時間は当然短くなってしまいます。
睡眠と運動は、我々が人間が健康に生活していくため、あるいは効率良く脳を働かせるために非常に重要であるため、これらの時間がスマホによって削られてしまうのは大きな問題です。
さらに睡眠に関しては、
・スマホが原因のストレスや不安
・スマホの画面から発せられるブルーライト
・スマホを使うことにより分泌されるドーパミン
などによって、入眠が遅れたり、睡眠の質が落ちるなどの問題もあります。
そのため、眠りにつく前はスマホやタブレットを使うのは避けた方が良く、これらを寝室に持ち込まないのがベストとなります。
どうしても寝室にスマホやタブレットを持ち込みたいなら、寝る前には画面を暗くして、目から最低36cm離して見ることで、ブルーライトによる害は軽減できます。
良質な睡眠と運動に関しては↓の記事でも紹介していますので、気になる方はご覧になってみてください。
まとめ
書籍『スマホ脳』の内容から、”スマホが現代人に与えている悪影響”について紹介してきました。
ポイントを以下にまとめておきます。
・スマホが近くにあるだけで集中力が奪われる
・スマホが手元にあるとマルチタスクをしてしまいがちになる
・マルチタスクは集中力や記憶力を低下させる
・スマホの使用時間が長くなるほど鬱のリスクが高まり、不安症状も多く見られるようになる
・神経質で心配性で常に不安を抱えている人、SNSを見るだけで自ら投稿はしない消極的なユーザーはSNSにより精神状態が悪くなりやすい
・SNSを現実の社交生活をより引き立たせるために利用している人は、むしろ精神状態が良くなることもある
・スマホに依存すればするほど、「将来の大きなごほうび」のために「目の前の小さなごほうび」を我慢できなくなってしまう
・スマホを使う時間が長くなるほど、睡眠時間や運動時間は短くなる
・スマホの使用により入眠が遅れたり、睡眠の質が落ちるため、眠りにつく前のスマホ使用は避けた方が良い
『スマホ脳』には、この記事で紹介したこと以外にも、”スマホが私たちに悪影響を与えるメカニズム”や”スマホによる悪影響を抑えるための方法”などについてもまとめられています。
より詳しく知りたい方は、ぜひ『スマホ脳』を読んでみてください。
以上!
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